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帯状疱疹ワクチンの問い合わせが増えています

この後の話が長くなるのでここの文章の結論を先に書きますと、、、

①50歳過ぎたら帯状疱疹ワクチンを接種したほうが良い。
→理由は「デメリットが少ない=いわゆる「後遺症」になるような副反応が少ない」。
ワクチン接種のような「やらなくてもいい、いい意味でよけいな医療」においてはこれがやはり重要でしょう。
②接種するワクチンの種類は、、
1) 無難にいくなら従来から使用されている水痘ワクチン(税込み5,500円×1回注射)
2) 金額を気にせず、神経痛による後遺症を絶対に避けたいならシングリックス(税込み22,000円×2回注射)

最近、帯状疱疹ワクチン接種の問い合わせを多くいただくようになりました。
その理由は、、
①コロナ禍で帯状疱疹の発症頻度が増えた可能性がある。
②効果の高い(と思われる)ワクチンが接種できるようになった。
といったことが考えられます。高齢のご両親に誕生日プレゼントとしてワクチン接種を送りたい、という方もおられました。
実際に診療している側としても、帯状疱疹ではないか、と心配されて受診される患者さんは明らかに増えている感覚はあります。ただ、本当に帯状疱疹と診断できた患者さんも増えているかといえば、正直何とも言えないかな、というところです(帯状疱疹はデルマクイックⓇという迅速kitで診断できます)。ネットで気軽に自分の症状を検索でき、医療機関を受診しやすくなった今日では多くの病気は発見されやすくなっているので、「帯状疱疹かも?」と考えて受診される方は増えてきているのかもしれません。

・どんな病気?
帯状疱疹という病気は、いわゆる「みずぼうそう(水疱瘡)」にかかったことがある患者さんの体内で、その原因ウイルスである「水痘帯状疱疹ウイルス」が再活性化することで痛みを伴う湿疹を作り出す病気です。
再活性化する原因は様々ですが、多くは抵抗力、免疫力の低下だと言われています。実際、私も30歳代で罹患したのですが医者5-6年目で今振り返っても一番忙しかった時だったと記憶しています。なんか痛むなぁと思って数日脇腹を気にしていたら痛みが引いてきたタイミングで水ぶくれのような湿疹が出てきてめでたく診断に至った、という経験でした。幸い、神経痛が残ることもなく湿疹もきれいに消えましたし、そもそも抗ウイルス薬も飲まずに自然に治りました。
ただ、ふりかえるとこれはただ運が良かっただけで、当院に通われる患者さんの中にはずっと神経痛で内服治療をうけている方も珍しくありませんし、顔面神経や三叉神経にウイルスが感染して表情が不自然になったという患者さんもおられます。なによりも「ふとした時に痛みが気になる」という状態とずっと付き合っていくのはやはり小さくないストレスだろうなと感じています。「痛い」という感覚は結局のところ本人にしかわからないのです。
おかげで今では私も、胸やおなかにピリピリとした痛みが走ると「帯状疱疹では?」と疑って湿疹ができていないか必ず確認しますし(幸いすぐに気にならなくなるような神経痛なのですが笑)、後述のワクチンも50歳を越えたら接種しようと考えています。
帯状疱疹は、一説では80歳までに日本人の1/3に罹患すると言われておりその30%で神経痛が残ると言われています。

・治療はどうする?
一般的な風邪や湿疹は薬局で購入できる市販薬で治療可能ですが、帯状疱疹については医療機関での診断をうけたうえで抗ウイルス薬の内服治療が必要となります。特徴的な症状としては、チクチク、ピリピリとした痛みやかゆみが最初に出現し、その後に赤い湿疹→水ぶくれのような湿疹となります。初期の痛みにはいわゆる解熱鎮痛薬の内服で対応できますが、注意すべきは、湿疹が順調に消失した後に後遺症として残る神経痛で、ウイルスが神経障害を起こすことで痛みが持続します。症状の強さは人それぞれで、多くの患者さんは「ふとした時に気になる程度」で済むのですが、中には服が当たるだけで痛む、痛くて横になれない、というケースもあります。このような症状は数日で治癒する場合から年単位で症状が持続する場合まで様々で、重症化予防のポイントとしては、「発疹出現後3日以内に診断をうけて治療を開始すること=早期診断、早期治療」と言われています。神経痛に対しては、神経痛治療薬や抗けいれん・てんかん薬を内服するのが一般的で、症状が強い場合はペインクリニックでの神経ブロック治療もお勧めしています。
・ウイルスの活性化抑制(重症化予防)→抗ウイルス薬
・痛み・かゆみ→解熱鎮痛薬
・神経痛→抗けいれん薬、抗てんかん薬
といった流れです。もちろん、神経痛が出現しないことがベストなのですが。
帯状疱疹の発症要因としては、免疫機能=抵抗力の低下が重要で、その原因としては①高齢②抗がん剤を含めた免疫抑制治療、などが挙げられます。ですから、どんな人がこの病気に注意しないといけないかといえば、様々な病気を持病としてかかえていくようになる「高齢者」ということになります。

・どうやって予防する?
帯状疱疹はウイルス感染症なので、ワクチン接種をおこなうことで100%ではありませんが発症予防をすることができます。病気へ対処法の基本は、今も昔も「一次予防」という「どうすれば病気にならないで済むか」という考え方なので、メリットとデメリットを比較しながら病気にかかる前に予防していくのが良いでしょう。
現在、接種可能なワクチンは以下の2つです。
①乾燥弱毒生水痘ワクチン
従来から小児の水痘予防に使用されてきた、弱毒化された生きたウイルスが含まれている生ワクチンです。ウイルスが含まれているといっても弱毒化されているため水痘、帯状疱疹にかかってしまうことは全くありません。30年以上前から使用されているため安全性は担保されています。最初にも書きましたが、健康な人が治療をうける時に最も大事なのはとにかく安全性です。このワクチンの最大の売りは「安全性」です。効果の持続期間は5年間で50%程度という成績が出ています。効果があるのは確かだけど時々かかってしまう、「長続きするインフルエンザワクチン」といったイメージでしょうか。

→ワクチン接種の有無で発症率にちがいが出ているのがよくわかるグラフですね。
②シングリックス
ウイルス表面タンパクの一部を抗原とした組換えサブユニットワクチンです。不活化ワクチン=病原体そのものではないので接種することで罹患することはありません。このワクチンの特徴は、高い予防効果とその持続性です。まだ、実際に使用が始まって10年程度ですが、接種後10年経過しても80%程度の高い発症予防率を保っています。ただ、逆に言えばまだ10年程度しか使用していないため、今後予期せぬデメリットが明らかにならないとも限りません。

どちらのワクチンが優れているということではなく、ワクチン接種を通して「予防手段があるものはしっかり手をうっておく」ことが大事だと思います。そうすれば、万が一それでも帯状疱疹にかかってしまったとしても、「できるだけのことはやっていたのだから仕方ない」と考えて後悔しないで済むと思います。
これは帯状疱疹に限らず、今回の新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスにも通ずることなのではないでしょうか。